原因はおかまのジュース? 陶器の街カルタジローネからシラクーサの街に戻った私達は、日本でイタリア料理を教えていた と言う日本びいきのシェフがいるレストランで夕食をとった。残念ながら味はそこそこだったが、アンティパストミスト(前菜の盛り合わせ)の種類の多さと、さすがシチリア!魚介類を使ったメニューの豊富さには驚かされた。海を望むオープンテラス席も風が心地よく、遠くの灯りがぼんやりと揺れているのを見ていると心が洗われる気がした。 翌日はエトナ山の山麓を観光後、広大な敷地を持つアグリツーリズモ「オリーブの木」を見学。そこで昼食を取るスケジュールになっていた。エトナ山観光を終え、アグリツーリズモへと向かうオリーブ畑の中の細い山道を登る途中で、彼女の様子がおかしくなった。気分が悪いしお腹も痛いと言う。オリーブ畑以外に何もなく、舗装もしていないでこぼこクネクネした山道を揺られるのは、腹痛を訴える彼女にとって拷問に近い状態だったに違いない。アグリツーリズモに到着するやいなや顔面蒼白でトイレに駆け込み、しばらく出てこなかった。 そんな彼女をよそにテーブルにはアグリツーリズモの名物料理が所狭しと並べられた。昨日の夜の魚介中心の料理とは打って替わり肉料理中心だ。それもそのはず、広い敷地内にはオリーブ畑はもとよりエリアごとに黒豚、牛、ダチョウ、鹿などが放し飼いにされていた。その半端じゃないスケールに圧倒されつつ、シチリアの大地に育まれた食材をふんだんに使った料理を堪能した。 そんな中、料理には目もくれずぐったりと横たわる気の毒な彼女を見て誰かが呟いた。「原因はおかまのジュースじゃない?」 そうだ!昨日訪れたカルタジローネの小さな公園内のバールで、彼女はひとりだけオレンジジュースを頼んだ。普通イタリアのバールはその場でオレンジを搾ってくれることが多いのだが、そのオレンジジュースは明らかに市販のものをグラスに注いだだけのものだった。それもかなり濁った色をしていたから「何頼んだの?」と聞い返したぐらいだ。 そのバールは若い男?のカメリエーレ(ウエーター)がひとりで切り盛りしていたが、飲み物を運ぶ仕草はまるで女の子みたいで、常に小指が立っている。携帯電話で話す仕種も女の子?と思わせる雰囲気が漂い、やっぱり携帯を持つ小指が立っていた。オレンジジュースの色がおかしいと皆気付いてはいたが「おかまかなぁ〜?」に気を取られ、それ以上詮索するのをやめてしまったのだ。 私はと言えば『おかま』はイタリア語で何て言うのか気になって気になって、思わず運転手のイタリア人に尋ねた。彼は「ここではまずいよ。教えたら何度も口に出して言うでしょ。彼に聞こえたらどうするの?」確かに!きっと口々に6回は連呼するだろう。 結局腹痛の原因はハッキリしなかった。苦しんだ本人は日本におかまの友人がいるので「おかまのジュースじゃない!」と強く主張したが、私達からみればあの濁ったオレンジジュースがやっぱり怪しい!! ところで『おかま』はイタリア語で『finocchio』(フィノッキオ)と言うのだそうだ。なぜかハーブの一種ウイキョウやフェンネルも同じく『finocchio』と言う。使う場所にはくれぐれも注意しなくっちゃ!と肝に銘じた。