イタリアで最も住みやすい町「トーディ」 ペルージャのパルテジャーニ広場からAPM SITのバスで約1時間。“イタリアで最も住みやすい町”に選ばれたトーディは、テヴェレの谷を見下ろす丘の上にある。イタリアで最も住みやすい町?興味津々、どんな町だろうと心踊らせながらバスに乗った。 昨日ほど雨足は強くはないが、今日もかなりの強風が吹いている。まだ10月だと言うのに、ここ数日の冷え込みで一気に地元の人々の服装が真冬の装いに変わっていた。 トーディ行きのバスに乗り込んだのは10人足らず。大きな循環バスの前の方に、皆が思い思いに座っていた。バスが出発した途端、もしかしたら私以外はみんな顔見知り?と思ってしまうような、運転手も巻き込んだ気が置けないおしゃべりが始まった。 そして中心になって話していたのは、運転手のすぐ後ろ右側に陣取った貫禄ある女性。回りの人達や運転手とも本当に親し気に話している。そして降りる人も運転手と彼女には必ず挨拶してバスを降りる。日本ならさながら「世話好きおばさん」というところか。見知らぬ観光客はやはり私だけのようだ。 しばらくしてデルータ焼きで有名なデルータの町に入ると、景色が一変した。道の両脇にはデルータ焼きの工房とショップが延々と立ち並び、その独特の鮮やかな黄色や青・緑の色彩が目に飛び込んできた。陶器が大好きな私にとっては『ファンタスティックな道』。浮き浮きしながらバスの窓にへばりついてそれを眺めた。 ふと気がつくと、デルータの町でほとんどの人が降りてしまっていた。私を入れて乗客は3人?ちょっと心細くなって前を見ると、あの「世話好きおばさん」と目が合った。おばさんが「私達は次でおりるけど、あなたはどこまで行くの?」「終点のトーディまでです。」おばさんの目が一瞬キラッと光ったように思えたのは気のせいか・・。「こっち、こっちにいらっしゃい。私が降りたらここに座って、彼(運転手)と話しなさいね。」茶目っ気タップリ、でも至上命令ともとれる口調でそう言った。 次の停留所で彼女はもうひとりの乗客と共に、元気よく手を降り笑って去っていった。目とジェスチャーで、もう一度私を彼女がいた席に座るように促してから。 結局残り30分トーディまでの道のりを、私は運転手と話し続けることになった。運良く彼は明るくて陽気な、典型的なイタリア人。おかげで話が途切れることもなく、けっして流暢ではない私のイタリア語にも親切に耳を傾けてくれた。そして万国共通、食べ物の話になると目を輝かせ、大いに盛り上がった。 最後にウンブリア州のお勧めの町を尋ねると、彼は直ぐさま「グッビオ」と答えた。そしてしばらく絶賛し続けた。グッビオには一度行ったことがあるので、今回はもし時間があったら行こうかな?と思っていたのだが、彼のその言葉に「もう一度訪れてみよう!」と心に決めた。 トーディの町はというと、眺望絶佳な中世の街並が美しい素朴な町だった。正直取り立てて他の町よりここが優れている、というところは私には見当たらなかった。ただ、ひたすら穏やかな時間が流れていて、それがこの町の宝物かも知れないと感じた。 中世の時代から変わらぬ時がゆっくりと流れている町トーディ。私達が忘れてしまったものが、ここにはまだ息づいている。(続)